2025/01/24 13:18
2025年の幕開けとともに、渡辺えりさんの古稀記念公演『鯨よ!私の手に乗れ』と『りぼん』という2つの壮大な舞台に挑む機会をいただきました。
どちらも反戦、フェミニズム、そして演劇の力をテーマに掲げた壮大な作品で、2作品連続上演という厳しいスケジュールの中、俳優として大きな挑戦と成長の機会を与えてくれた公演でした。
『鯨よ!私の手に乗れ』──演劇の中の演劇が教えてくれたこと
『鯨よ!私の手に乗れ』は、認知症を抱える元劇団員たちが幻の戯曲を完成させるため、介護施設で稽古をするという多層的な物語。劇中劇という形式を通じて、「生きること」や「演じること」の本質が浮き彫りにされる作品でした。
私はセリフのない介護士や老人役として出演し、トロンボーンの演奏やピナ・バウシュ風の老人ダンスなど、身体を使った表現に挑みました。目立つ役柄ではありませんでしたが、この役に真摯に向き合う中で、舞台上の存在感や感情の伝え方について深く考えることができました。
特に、木野花さんから教わった「役を血肉に宿らせる」という姿勢は、俳優としての大切な基礎を見直すきっかけとなりました。一つひとつのセリフを内側から湧き上がるように演じ、毎回新鮮に発すること。そのために、役が持つ感情を丁寧に作り込むことの重要性を学びました。
渡辺えりさんも「気持ちで動くこと」をよく強調されていましたが、この基本があるからこそ舞台の上で「生きる演技」ができるのだと実感しました。
『りぼん』──鎮魂劇としての反戦、フェミニズム、演劇の力
続く『りぼん』では、戦争、戦後、そして現代を舞台に、人々の命と魂の繋がりを描く壮大な群像劇が展開されました。
アメリカ兵との間に生まれ、外国人墓地に捨てられた混血児たちの魂を鎮めるこの物語は、反戦やフェミニズムというテーマを背景に、命の尊さと人間同士の繋がりを問いかけるものでした。
私は「学生服のチンパンジー」という一見ユーモラスな役を演じましたが、失語症の中学生の生まれ変わりとして登場し、さらにギターを弾く少年やスケボーを披露する現代の中学生へと転生していく多面的な役柄をいただきました。この役を通じて、命の循環や魂の遷移を身体で表現するという貴重な経験を積むことができました。
特筆すべきは、最後に渡辺えりさんが歌われた場面です。
その歌声には、音楽の力、言葉の力、人間の魂の繋がりの力がすべて詰まっていました。劇場全体がその歌声に包まれ、観客と舞台が一体となる瞬間を体感しました。『りぼん』は、渡辺えりさんが世界に発信すべき戯曲だと強く感じました。
古稀記念公演で得た宝物
今回の公演では、日本演劇界を代表する素晴らしい先輩方や音楽家の方々と共演する機会に恵まれました。
木野花さん、三田和代さん、桑原裕子さん、室井滋さん、広岡由美子さん、大西多摩恵さん、深沢敦さん、ラサール石井さん、宇梶剛士さん、福間むつみさん、シルヴィア・グラブさん、大和田美帆さん、藤浦功一さん、土屋良太さん、吉田裕貴さん、小出奈央さん──名優の皆様から学んだことは一生の財産です。
また、音楽家の近藤達郎さんにご指導いただき、世界トップクラスのバンドネオン奏者・川波幸恵さん、チェリスト・佐藤舞希子さんと共演することで、音楽が持つ圧倒的な力を肌で感じることができました。これらの経験は、今後の俳優人生を支える大切な礎となるでしょう。
パンフレット制作という裏方の経験
今回、パンフレット制作にはチーフとして携わりました。
同じ若手俳優の東宮綾音ちゃん、黒河内りくちゃんと力を合わせ、締切ギリギリまで改善を続ける渡辺えりさんと徹夜で制作したパンフレット。完成したものを手に取ると感慨深い気持ちになりました。なんと価格は1500円!笑
お買い求めくださった皆様、本当にありがとうございました。パンフレットを通じて、公演の魅力がさらに伝わっていれば嬉しいです。
次回公演への思い
この2つの舞台を通じて、俳優としての新たな視点と課題を得ることができました。
『鯨よ!』で学んだ身体表現や役へのアプローチ、『りぼん』で挑んだ命や魂のテーマ。それぞれの舞台で得た経験を糧に、次回の挑戦に向けてさらに精進していきます。
詳細は追ってお知らせしますので、次回公演もぜひご期待ください!
最後に
渡辺えりさんの古稀記念公演『鯨よ!私の手に乗れ』と『りぼん』。
この2つの舞台は、私にとって俳優としての新たなステップとなる貴重な経験でした。えりさんの情熱と創造力、舞台に対する真摯な姿勢に触れ、演劇の力を改めて感じました。
これからも一つひとつの役と真剣に向き合い、観客の皆様に感動をお届けできるよう全力で挑んでまいります。引き続き応援よろしくお願いいたします!
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